戦略的撤退だと思われたい

若者+京都+田舎+移住+古民家+シェアハウス-気合い=0

バトル漫画におけるつよさインフレをとめたい

少年漫画みなさん好きですか。ぼくは好きです。バトル漫画も大好物です。ただ、バトル漫画って結構「インフレ」しちゃって萎えちゃいますよね。「インフレ」ってどういうことかというと。ストーリーを展開していきたい→主人公をどんどん成長させていくにつれて敵も強くなっていく→序盤の敵が雑魚になる→つよさの指標が破綻するというかんじ。インフレしても面白い漫画ももちろんたくさんありますが、「どうすればインフレせずに展開できるのか」というのはバトル漫画における命題のひとつでもあります。

 

たとえば、四天王と呼ばれる敵がいるとして、序盤に登場した四天王はもちろん弱い状態の主人公に倒されるわけです。そのため、終盤の成長した主人公と対峙する最後の四天王との強さの整合性がとれなくなるというような。ふつう四天王って並列で言われるくらいなんだから、強さもそこそこ均等なはずではということですね。

こうしたことがなぜインフレと呼ばれるかというと、つよさの指標を数字にするケースで破綻することが多いからです。ドラゴンボールの戦闘力や幽遊白書の後半の妖力値ですね。最初が5とか80なのに、最後何百万とか。

 

なぜこんな話をいましだしたかというと、マンガワンという小学館系の漫画アプリで『史上最強の弟子 ケンイチ』という漫画が久しぶりに掲載されていて、読み直して優秀だなと思ったからです。

史上最強の弟子 ケンイチ』は、いじめられっこで日陰者のケンイチが、梁山泊という道場(?)に住まう様々な武術の達人の弟子となり修行することで、「闇」と呼ばれる巨悪と戦うまでに成長していくという筋書きのバトル漫画です。

なぜ優秀か。それは「達人」というクラスと「弟子」というクラスが明確に分けられているからです。それらは単なる呼称ではなく、階級として確実に存在しています。作中全編を通して、ほぼ弟子クラスが達人クラスに勝利することはありません。

ケンイチが弟子入りする梁山泊の面々は達人クラスで、最初っから強さの頂点にいます。そして、ケンイチは弟子クラスなのでどれだけ強くなろうとも作中では師匠を超えるということはありません。あくまで史上最強の「弟子」です。

とはいっても、主人公であるケンイチが恐ろしく強くなって弟子クラスから達人クラスになり最強になってインフレが破綻していく展開もあるわけです。そうならずに二階級構成が成立しつづけられる要因はいくつかあります。その一番大きな要因は、敵も味方も武術家であり、達人同士/弟子同士での戦いの構図を原則破らない(例外はあり)ため、弟子が達人と対峙しそれを撃破しなければならないという状況にあまり陥らずにすむことです。

「戦わなくてすむ自分よりも強い相手」を設定することは実は簡単ではありません。世界征服を目論む魔王と倒そうとする勇者という基本の構図のもとでは、勇者よりもつよい敵が、勇者を倒さないでいてくれるということはないからです。ではそこで勇者よりもつよい敵よりも強い味方を出すとします。すると、その人が全員を倒してまわればいいという話になってしまって、「隠居」だの「途中退場」だののギミックが必要になります。その結果、勇者よりもつよい敵はたくさん出すことができず、結局のところもとの魔王と勇者という構造に戻ってしまいます。

ケンイチの場合は、そもそも達人はケンイチを相手しておらず、ケンイチも達人を相手にしていません(勝てると思っていません)。それは、明確な階級さとその階級を破らせないルールが存在するからですね。

 

ぼくもこの二階級構造を使って、インフレしないバトル漫画の設定を一人夜な夜な検討していますが、武術家としてのルール、達人/弟子という、直感的に誰にでもわかりやすいルールはなかなか見つけられていません。